除草剤について知ろう!そもそも除草剤って?
除草剤とは、不要な植物や雑草を枯らすために用いられる薬剤、つまり農薬です。
その除草剤には2タイプあります。
(1)除草剤に接触した全ての植物を枯らす非選択的除草剤
(2)農作物に比較的害を与えず対象とする植物を枯らす選択的な除草剤
に分けられます。また植物ホルモン類に似た効果で、雑草の生長を阻害するものもあります。
除草剤の歴史
除草剤が出始めて広く使われた最初の除草剤は2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 (2,4-D)というもので、第二次世界大戦直後から使われたそうです。
これは製造が簡単で、広葉(双子葉)植物を枯らすのに対し、イネ科植物には影響を与えず、現在でも用いられます。
多くはアミン塩やエステルの形がとられ、2,4-Dの選択性はあまり高くなく、除草の対象でない植物にも害を与える。
また広葉植物でも一部の広葉雑草やつる植物、スゲ類などには効果が低いとされています。
1970年代にはアトラジンという除草剤が導入されましたが、これはヨーロッパなどで地下水を汚染しているのではないかと疑われています。アトラジンの分解には数週間かかり、降雨によって地中深く浸透すると考えられるためでだそうです。
このことを「キャリーオーバーが多い」と称し、除草剤としては望ましくない性質であるとされています。
グリホサート(商品名:ラウンドアップ)は、1980年代半ばに導入された(1)の非選択的除草剤で、直接散布されて接触したすべての植物を枯らす作用があります。
現在では遺伝子操作により、この除草剤の威力に耐える作物が開発されたため、雑草を枯らすというより雑草がそもそも生えてこないように防止することを目的として主要な除草剤となっています。
そのことから、ラウンドアップ除草剤とそれに耐えられる作物種子(耐性作物種子)がセットで売られるようになったといえます。
現在の農業用除草剤は、散布後短時間で成分が分解するように調製されています。
目的とする作物栽培が終わり、次に栽培する作物への残留除草剤の影響を減らすことができるので、そういった意味では望ましいようです。
除草剤の分類
作用のタイプ別分類
- 接触型
- 接触型除草剤は、散布された除草剤に接触した部分の植物組織だけを除去する。一般には、最も速く作用する除草剤である。根茎から生長する多年生植物には効力が低い。
- 吸収移行型(全草型)
- 吸収移行型(全草型)除草剤は、茎葉に適用し植物体全体に移行する。接触型除草剤より多くの植物を除去する。
- 土壌処理
- 土壌処理除草剤は、土壌に適用し根から吸収されて作用し、あるいは雑草の発芽成長を妨げる。
除草剤の問題
吸収移行型の非選択的除草剤パラコートは作物栽培前にすべての植物を枯らすために用いられます。
これは活性酸素の発生により全てを枯らす作用をしますが、動物に対しても毒性が大変強くなります。
パラコートは除草剤の中では最も急性毒性が強いものであり、ときに自殺に使われ(ただし解毒剤が存在しない上にすぐには死ねず、甚だ悲惨な症状を呈する)問題となっています。
2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸 (2,4,5-T) は、1970年代に広く使われた広葉用除草剤で、2,4,5-T自体の毒性はあまり強くはないです。しかし、2,4,5-T製造過程で不純物として微量の2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD)、すなわちいわゆるダイオキシン類の一種が合成されるため、問題となっています。
TCDDは非常に毒性が強く、2,4,5-Tはアメリカ合衆国では1983年に失効しました。
(※日本では催奇性などの疑いから1975年に失効。)
オレンジ剤(いわゆる枯葉剤)はベトナム戦争で盛んに使われたものです。
このオレンジ剤という除草剤は、「2,4,5-Tや2,4-Dの混合剤」であるが、一般の2,4,5-T剤よりさらに多くのTCDD(ダイオキシンの一種)を含んでおり、実際にベトナムで健康被害の原因となったのではないかと指摘されて大問題となっています。
日本でもかつて「除草剤2,4-Dやクロルニトロフェン」などに微量のダイオキシン類が含まれていたことが明らかになり問題になりました。しかし現在登録されている除草剤(農薬)にはダイオキシン類は全く含まれていないそうです。
また、日本で1970年代まで販売されていた「塩素酸塩系の除草剤」は火薬に転用可能で、連続企業爆破事件などの爆弾テロに用いられたことがあったため、製造中止になり法的管理が強化されたそうです。
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